福生物語

1970年代の福生。
米軍ハウスが2000件以上もあり。(現在では150件弱)家賃が3万円で借りられたこの時代。
週刊プレーボーイにこのハウスが取り上げられてからミュージシャンや画家、作家やデザイナー、そして自由を求める若者達がこの町に集まった。
そこで繰り広がれる面白おかしな出来事を少女チャコの目線で語ります。
第5話「ご近所さん」



ある日の午後、お父さんがシャワーを浴びていると誰かが尋ねて来ました。
大事なところをタオルで隠しつつ出ると 
そこには 近所に住む森さんの奥さんが申し訳なさそうに立って居ました。
森さんの奥さんはいつも謝っている様な とても腰の低い人です。
「すみませんけど、お醤油、かしてもらえないかしら?
ホント、申し訳無いんだ けど。」

「あゝ、どうぞどうぞ。」
ウチの近所ではよく、足りないものの貸し借 りをおこなっていました。
そして、シャワーのつづきに入るお父さん。

しばらくすると
「ピンポーン」
又、 誰かがやってきました。
出ると、森さんの奥さんが立って居ました。

「度々、すみません。本当に申し訳ないですけど、お砂糖あるかしら〜?
親子丼 作ろうとしてるんだけど、お砂糖も無いのに気付いて〜、
ホント、ごめんなさい ね、お風呂入ってる時に〜」
「いえいえ、いいんですよ。ちょっと待ってて下さ いね。」

お父さんは森さんの持って来た器にお砂糖を入れて渡しました。
何度もお辞儀 をして帰って行く森さんの奥さん。

シャワーにも入り終わり、体を拭いている と
「ピンポーン」
又誰かが尋ねて来ました。出ると、森さんの奥さんでした。 
「本当に申し訳ないですけど、卵3っつ程あれば分けて頂きたいんデスけど。」 
そんな様子を見ていた私は(おかしな人だ)とお父さんの顔を見ると、
お父さんも ちょっと笑いをこらえている様でした。
森さんの奥さんは又大変申し訳なさそ うに帰って行きました。

「森さんて、おもしろいね」




お母さんが仕事から帰って来るまでダラダラ過ごす私とお父さん。
テレビを見たりお菓子を食べたり昼寝したり..
その内辺りも暗くなって来ました。
「そろそろ、お母さんも帰って来るね」
すると、となりの部屋のドアがきゅうに開いたのです。
誰も居るはずの無い真っ暗な部屋から女の子が出て来たので
私たちはギョッっとしたのですが
彼女は何も言わずに出て行きました。
「なあんだ、ノアが居たんだね」

ノアは隣に住む女の子で、人付き合いは苦手なのですが読書が大好き。
家にある本は全て読み終わってしまったので
近所の家の本を読んでまわっているのです。
読んでいるときの彼女はすごい集中力
午前中から部屋へこもると昼ご飯もたべません。
トイレも行きません。
夕方、字が読めない程暗くなると だまって帰って行くのです。

あんまり静かなので 気付かず鍵をかけて出掛けちゃう事もしばしば
もう勝手に誰が家に入っても気にしない
ほのぼのライフのご近所付き合いです。
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1970年代の福生。米軍ハウスが2000件以上もあり。
(現在では150件弱)
家賃が3万円で借りられた時代。
週刊プレーボーイにこのハウスが取り上げられてから
ミュージシャンや画家、作家やデザイナー、
そして自由を求める若者達がこの町に集まった。

そこで繰り広がれる面白おかしな出来事を
少女"チャコ"の目線で語る。



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